分厚い技術書をNotebookLMでEPUBごと耳学習に変える
たとえば、こんな夜
エンジニアの本棚に「最初の50ページだけ読んだ技術書」が積み上がっている夜があります。アーキテクチャ系、データベース系、分散システム系。重要だと分かっているのに、最後まで読み切る前に次の本を買ってしまう状態が続きます。仕事ではChatGPTもClaudeもCursorも毎日使っているのに、プライベートで「本を読む」体験をAIに手伝ってもらう発想は抜けがちです。同棲生活で家で本を開く時間がほぼゼロになり、寝る前の20分だけでは600ページが終わらない瞬間があります。
こんなふうに使える
EPUB / PDF をNotebookLMにアップロードして、Audio Overview(AIホスト2人によるポッドキャスト風音声)で聴けます。再生中のInteractive Mode(Join)でAIに割り込み質問でき、本に書いてある内容だけで答えてもらえます。citation jumpで「今の話、本のどこに書いてあったか」を一発で確認できます。
想像してみると
600ページのEPUBをNotebookLMの新しいノートブックに入れてみる。Studioパネルから「Audio Overview」の「ディープダイブ」を選び、フォーカスに「特に第3章のトランザクション周りを中心に」と打ち込んでみる。数分待つと、AIホスト2人がACIDについて雑談している番組ができあがる流れがあります。iPhoneのNotebookLMアプリにダウンロードして、通勤の30分で再生してみる。「ここの説明、もう少し具体例ほしいな」と思った瞬間にJoinボタンを押すと、ポッドキャストが止まり、本の中身に基づいて答えが返ってくる感覚があります。
この記事でできること
積読になっている分厚い技術書を、NotebookLM に EPUB ファイルごと投入して耳で読み切る方法を紹介します。Audio Overview で耳学習に変えて、わからない部分は再生を止めて「Join」で質問しながら通勤で消化できます。
- EPUB / PDF を NotebookLM にアップロードして、Audio Overview(AI ホスト2人によるポッドキャスト風音声)で聴けます
- 再生中の Interactive Mode(Join)で AI に割り込み質問でき、本に書いてある内容だけで答えてもらえます
- citation jump で「今の話、本のどこに書いてあったか」を一発で確認できます
使うもの: NotebookLM(無料版でOK) かかる時間: 約20分(生成は数分待つだけ、後は通勤時間) 必要なスキル: なし
EPUB がそのまま入る
NotebookLM(ノートブックエルエム)は Google が出している読解 AI で、2026-03-20 のアップデートで EPUB ファイルにも対応しました。電子書籍ストアで買った本のうち、DRM がかかっていない技術書(O’Reilly の一部、自費出版の同人技術書、書籍化された Web 連載など)は EPUB をそのままアップロードできます。
加えて以下の形式に対応しています。
- PDF(紙の本をスキャンしたものも可)
- Microsoft Word(.docx)
- 画像(手書きノート、写真、パンフレット)
- Web URL、YouTube 動画
- Google Drive 上の Docs / Slides / Sheets / PDF
「とりあえず読みたい本に関連するものを全部1つのノートブックに突っ込む」やり方が効果的です。本のEPUBと、著者がブログで書いた補足記事URLと、関連するカンファレンスの YouTube 動画を1つのノートブックに同居させる、みたいな使い方ができます。
手順
[screenshot: Audio Overviewで本を聴いている画面]
ステップ1:本をノートブックに入れる
notebooklm.google.com を開いて、「新しいノートブック」を作成、EPUB ファイルをアップロードします。本1冊で1ソース。500,000語まで入るので、技術書1冊なら基本ひとつのソースに収まります。
ステップ2:Audio Overview を生成する
Studio パネルから「Audio Overview」を選びます。形式は「ディープダイブ」を選ぶと、章ごとの内容を比較的詳しく解説してくれます。フォーカス(「特に第3章のトランザクション周りを中心に」のような指示)を指定できるので、本のどこから読みたいかを伝えておくと、無駄な前置きが少ない番組になります。
生成は数分。終わると iOS / Android の NotebookLM アプリ(2025-05-19 公開)にもすぐ反映されて、オフラインダウンロードして通勤に持ち出せます。
ステップ3:通勤で聴く、わからないところで Join
通勤の30分で聴きながら、「ここの説明、もう少し具体例ほしいな」と思ったら「Join」ボタンで割り込めます。Interactive Mode が起動して、AI ホストに直接質問できます。
「さっきの ACID の C の例、コードで言うとどんな感じ?」「この本の文脈での『冪等性』はどう定義されてた?」みたいな質問を投げると、本の中身に基づいて答えてくれて、答え終わるとポッドキャストが再開します。
NotebookLM は「ソースに含まれない情報には回答しない」設計なので、Join で質問しても「本に書いていない一般論」を勝手に混ぜてきません。これがエンジニア的には地味に大事で、書籍の文脈で確実に話してくれる安心感があります。
citation で「本のどこに書いてあったか」を確認
Audio Overview を聴いていて気になった箇所があれば、Chat 欄に「今の話、本のどこに書いてある」と聞けば citation チップつきで返ってきます。チップを押すと EPUB の該当パラグラフに飛ぶので、後で机に戻ったときにそこから手で読み返せます。
「耳で全体像をつかみ → 気になった箇所だけ目で精読する」という二段読みができるので、600ページの本でも最後まで「触れた」状態を作りやすくなります。
著作権まわりで気をつけたいこと
技術者として気になるのは、ここで扱う EPUB の権利関係です。NotebookLM はアップロードしたソースを Google が AI 学習に使うかどうかについて、利用するプランや設定で扱いが変わります。会社の機密資料や DRM 保護つきの市販電子書籍をそのまま入れる前に、自分のプランのデータポリシーを必ず確認してください。
商用利用のために本の内容を Audio Overview で配信する、といった用途は当然著作権侵害になります。あくまで「自分が買った本を、自分の通勤時間で消化するための個人利用」の範囲にとどめるのが安全です。
「積読が増える罪悪感」を耳に逃がす
買って読みきれていない本が本棚に並んでいるとき、その本に対して感じる「読まなきゃ」のプレッシャーは、思っているより集中力を削っています。NotebookLM の Audio Overview で「とりあえず通勤で1周は聴いた」状態を作るだけで、その本に対する心理的な距離がだいぶ縮まります。
仕事で AI をフル活用しているエンジニアほど、プライベートで AI を使う発想が抜けがちです。「本」というプライベートの極みみたいなものに AI を持ち込むのは最初は違和感があるかもしれませんが、結果的に読書量が増えるなら試す価値があります。