「あの店のあの味」を再現するためにAIに味を説明してレシピを作る
たとえば、こんな夜
旅行先で食べたカレーの香りが、半年経ってもふと蘇る夜があります。閉店してしまったラーメン屋のスープを、もう一度すすりたくなる夜もあります。検索しても出てこないし、店主に聞きに行くこともできません。レシピは、自分の舌の記憶の中にしか残っていません。
こんなふうに使える
味の記憶を5つの軸(基本の味・食感・香り・温度・後味)で言葉に分解すれば、AIが再現レシピを組んでくれます。「甘辛くて、ちょっとスパイシーで、とろみがあった」のような曖昧な説明でも材料と手順に変換できます。作って違ったら「もっと甘く」「柚子を強く」と返すだけで、微調整が積み重ねられます。
想像してみると
冷蔵庫を眺めながら、あの京都のラーメンを思い出してみる。「クリーミーでとろみのある鶏白湯、柚子がふわっと、塩気は控えめ」と打ち込んでみる。返ってくるのは、鶏もも肉と豆乳と柚子皮で組んだ自宅キッチン版のレシピです。週末に作って、ひとくちすすって「とろみが足りない、柚子が弱い」とAIに返してみる。次に返ってくるレシピでは、豆乳が増え、柚子は仕上げに果汁を絞る指示に変わっています。3回目で「あ、近い」と思える瞬間が訪れます。
この記事でできること
- 「甘辛くて、ちょっとスパイシーで、とろみがあった」のような曖昧な説明でもAIがレシピに変換してくれます
- 味の説明を掘り下げるための「味の分解シート」を使って、AIに伝わりやすい言語化ができます
- 1回で完璧にならなくても、「もう少し甘く」「もっとスパイシーに」と微調整しながら近づけます
使うもの: ChatGPT(無料) かかる時間: 20分(レシピ作成)+ 調理時間 必要なスキル: 基本的な調理ができる程度
味を言語化する:5つの軸で分解する
「おいしかった」だけでは、AIもレシピを作れません。味を言葉に変換するために、5つの軸で分解してみてください。
1つ目は「基本の味」。甘い、辛い、しょっぱい、酸っぱい、苦い。どれが強かったか、組み合わせは。
2つ目は「食感」。とろとろ、シャキシャキ、もちもち、カリカリ。口に入れたときの感触。
3つ目は「香り」。スパイスの香り、焦がしバターの香り、出汁の香り。料理が運ばれてきたときに感じた香りは、味の再現に直結します。
4つ目は「温度」。熱々だったのか、冷たかったのか、ぬるめだったのか。
5つ目は「後味」。食べ終わったあとに残る余韻。「後味がすっきり」「じわっと辛さが残る」など。
全部を細かく説明する必要はありません。特に印象に残っている2〜3つの要素だけでも十分手がかりになります。
プロンプト例
以下の味の説明をもとに、自宅で再現できるレシピを作ってください。
【再現したい料理】
旅行先の京都で食べた「鶏白湯ラーメン」
【味の記憶】
・スープ:クリーミーでとろみがある。鶏の旨味が濃厚だが、しつこくない
・塩気は控えめで、柚子の香りがふわっとした
・麺:中太のストレート麺。少しもちもちしていた
・具材:鶏チャーシュー、白ネギ、三つ葉
・温度:熱々。最後まで冷めにくかった
・後味:すっきりしていて、ずっと飲みたくなるスープだった
【条件】
・自宅のキッチンで作れるレベルの手順にしてください
・材料はスーパーで手に入るものだけ
・調理時間の目安も教えてください
AIの提案をもとに微調整する
最初の提案で完璧に再現できることはまれです。実際に作ってみて、「もう少し甘いほうが近い」「柚子の香りがもっと強かった」と感じたら、AIにフィードバックしてください。
作ってみましたが、以下の点が記憶の味と違いました。
・スープのとろみが足りない(もっとクリーミーだった)
・柚子の香りが弱い
・塩気がやや強い
これらを改善したレシピに調整してください。
AIは調整版のレシピを返してくれます。「鶏ガラを長時間煮込む代わりに、豆乳を少し加えるとクリーミーさが増します」「柚子は皮を仕上げに散らすだけでなく、果汁をスープに加えてください」のように、具体的な改善策が提示されます。
この「作る→フィードバック→修正」のサイクルを2〜3回繰り返すと、かなり近い味にたどり着けます。
写真がある場合はさらに精度が上がる
お店で撮った料理の写真があれば、それもAIに送ってください。盛り付けや色合いから、使われている食材やソースの種類をAIが推測してくれます(ChatGPT無料版は画像1日2枚までなので、1〜2枚に絞るか、画像枚数制限の緩いClaude無料版での利用がおすすめ)。
「この茶色いソースはデミグラスソースではなく、みりんと醤油を煮詰めた照り焼き系だと思われます」のように、写真から味の方向性を推理してくれるので、レシピの精度が上がります。
注意点
味の記憶は時間とともに変化します。「あの味」として記憶しているものが、実際に食べたときの味と同じとは限りません。AIが作るレシピは、あなたの「記憶の中の味」を再現するものだと思ってください。
また、AIは特定の店のレシピを知っているわけではありません。あくまで味の説明から一般的なレシピを推測しています。完璧な再現というよりは「かなり近い味にたどり着く」という期待値で取り組むと、ストレスなく楽しめます。
味は言葉にすると再現できる
「おいしかった」で終わらせず、5つの軸で味を分解してAIに伝える。それだけで、記憶の中にしかなかった味が、自宅のキッチンで蘇る可能性が出てきます。完璧でなくても、「あ、近い」と思える瞬間があれば、それだけで料理がもっと楽しくなるはずです。